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寺田 宏明
点発生源からのメソスケール拡散シミュレーション; 福島第一原子力発電所事故をふまえて(気象研究ノート第248号), p.115 - 121, 2023/09
大気拡散モデルの検証に必要な入力データのうち放出源情報について述べる。ここでは、福島第一原子力発電所事故時の放出源情報として、日本原子力研究開発機構により大気拡散計算結果と環境モニタリングデータの比較に基づき推定された成果から、Katata et al. (2015)とTerada et al. (2020)について推定手法の概要と推定結果の特徴を解説する。Katata et al. (2015)では、新たに公開された環境モニタリングデータと沈着計算を精緻化した大気拡散計算により主要な放射性核種(Cs, Cs, I, Te)の放出率が逆推定され、従来の研究では不明であった事故初期の放出率の詳細な時間変化が明らかとなった。Terada et al. (2020)では、ベイズ推計に基づく統計的な最適化手法が導入され、大気中濃度,地表沈着量,日降下量の複数種の測定データを用いて従来の推定による放出率推移が最適化された。この再推定では、新たに公開されたCs大気中濃度の多地点連続データが活用され、このデータとベイズ推計を組み合わせた解析手法により放出率だけでなく気象場も改善された。
永井 晴康; 茅野 政道*
点発生源からのメソスケール拡散シミュレーション; 福島第一原子力発電所事故をふまえて(気象研究ノート第248号), p.1 - 58, 2023/09
原子力機構は、国内外の原子力事故時に大気放出される放射性物質による影響を評価するために緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIおよびその世界版WSPEEDIを開発した。これらのシステムは、実際に発生した原子力事故への対応をはじめ、様々な大気拡散事象に応用され、多くの実績を上げてきた。ここでは、これらのシステム開発の経緯と概要、システムの検証、そしてシステムの利用実績について解説する。
上出 英樹
火力原子力発電, 71(11), p.638 - 648, 2020/11
次世代原子炉の開発動向について、原子力機構が開発を進めるナトリウム冷却高速炉を中心に、日本の開発方針、SMRを含む世界の開発状況、原子力機構における技術開発の進展を解説する。
斎藤 公明
東京電力福島第一原子力発電所事故による環境汚染の研究調査の進展と課題(インターネット), p.8 - 10, 2020/07
福島第一原子力発電所事故3ヶ月後に開始され長期にわたって継続された大規模環境モニタリングの結果に基づき、地表面沈着量と空間線量率の地理的分布の特徴、検出された放射性核種と線量への寄与割合、放射性セシウムの総沈着量と土地利用別の沈着量比率等の情報をまとめた。さらに、2016年における生活圏での空間線量率は物理減衰により予想される線量率に比べファクター23小さいこと、この原因として、放射性セシウムの地中への浸透、水平方向への移行,除染が考えられること、また各原因の平均的な寄与割合について記載した。
中島 憲宏
福島第一原子力発電所事故: その全貌と明日に向けた提言; 学会事故調最終報告書, p.228 - 237, 2014/03
日本原子力学会は、原子力分野の専門家の集団として、原子力災害に対する責任を痛感し、事故の発生以来、事故の収束および環境修復に積極的に関与し、その責務を果たすべく活動に取り組んだ。その一環として、平成24年(2012年)6月22日、「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会」を発足させた。委員会は、学会を構成する部会や連絡会・委員会等から委員を集め、活動を進めた。原子力分野の専門家の学術的な集団としてこの事故を防ぎ得なかった反省に立ち、上記のさまざまな事故調査とは別に、専門的な視点から事故事象とその影響等について深い分析調査を行うと共に、原子力界の問題点についても真剣に向き合い、二度とこのような原子力災害を起こさないための対策を打ち出すことが、自らの責務と考え9章構成で報告する。
久野 祐輔
福島第一原子力発電所事故: その全貌と明日に向けた提言; 学会事故調最終報告書, p.262 - 274, 2014/03
2011年3月11日に発生した東京電力の福島第一原子力発電所の事故について、日本原子力学会では事故調査委員会を設け学会としての事故調査を実施した。この事象発生により、原子力発電所の核セキュリティ確保の観点からも、脆弱性に対する懸念が生じた。すなわち、福島第一の事故は、自然災害がもたらしたものであるが、妨害破壊行為によっても同様の事象が発生し得ることを示したものであり、核セキュリティ面でも安全対策と同様に、その重要性が認識された。本件は、この報告書のうち核セキュリティおよび保障措置・核物質計量管理に関する対応について調査考察したものである。
阿部 定好
原子力・放射線の整理と検討のための資料; 3.11福島第一原子力発電所事故について共に考える, p.101 - 102, 2013/03
福島県富岡町で、企画された「震災復興ビジョン策定委員会」及び「災害復興計画策定委員会」のオブザーバ支援を通じて行った社会貢献を現した。
飛田 健次
火力原子力発電, 61(10), p.1026 - 1031, 2010/10
2000年以降の我が国における核融合炉研究の概要と進展をまとめた。現在の核融合開発において中核を担う装置はITERである。炉心プラズマの研究ではITERの運転に見通しをつける研究がJT-60で精力的に実施された。その一例が、高いベータ値を長時間維持する研究であり、ITERの標準運転で必要な値(約2)を上回る規格化ベータ値2.5を約30秒間持続することに成功した。工学技術の研究開発では、ITERへの調達のため工学関連機器の開発と製作が進行中である。特に、超伝導コイルでの開発では、50MN/mにも及ぶ強大な電磁力に耐え1個あたりの重量が約300トンという大規模コイルの製作に関連する幾つかの課題を克服し、所定の精度を満たしつつ工程内で機器製作を実施できる見通しを得た。また、プラズマ加熱・電流駆動のための170GHz高周波源の開発では、高効率発振領域に安定移行する発振技術の開拓により、ITERの要求値を上回る出力1MW,効率55%, 800秒間の発振を世界に先駆けて達成した。ITER計画と合わせて、幅広いアプローチ計画が進行中であり、その概要を解説する。
日野 竜太郎; 小川 益郎
火力原子力発電, 61(10), p.1032 - 1037, 2010/10
原子力エネルギー利用の多様化を図り、地球温暖化ガスを削減するうえで、最高950Cの高温熱を取り出して発電のみならず水素製造等を行える高温ガス炉は極めて魅力的な原子炉システムである。本報では、高温ガス炉の優れた特長と世界の動向、世界をリードする日本の高温ガス炉開発の中核である日本原子力研究開発機構における研究開発の概要を紹介する。研究開発では、高温工学試験研究炉HTTRによる安全性実証や高温連続運転で得られた最近の成果について述べ、HTTR試験成果をベースにして実施した商用ガスタービン発電システム及び水素製造/発電を行うコジェネレーションシステムの設計、さらに、今後の展開を含めた将来展望について紹介する。
菖蒲 信博
火力原子力発電, 60(4), p.339 - 344, 2009/04
核燃料サイクル工学研究所の7ヵ年のリスクコミュニケーション活動事例をもとに、リスクコミュニケーションの具体的な手法・展開について紹介し、地域でこれを定着するための将来的な方向性について提言する。
大澤 英昭; 梅木 博之; 牧野 仁史; 高瀬 博康*; McKinley, I. G.*; 大久保 博生*
火力原子力発電, 59(6), p.512 - 519, 2008/06
高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する実際的な課題として、地層処分技術に関する知識の爆発的な増加が挙げられる。この課題に対応するためには、知識マネジメントの基本概念を取り入れ、長期に渡る地層処分事業において知識を伝承していくことが必要である。そのため、日本原子力研究開発機構では、最新の情報工学及び知識工学の技術を最大限に活用した次世代型の知識マネジメントシステムの開発を進めている。本稿では、地層処分分野における知識マネジメントの必要性を概観し、知識マネジメントシステムの開発の基本的な考え方と設計のアプローチを示す。
林 巧; 小林 和容; 山西 敏彦; 一政 祐輔*; 一政 満子*
火力原子力発電, 59(4), p.316 - 321, 2008/04
日本原子力研究開発機構は、核融合炉の安全性の向上をめざし、燃料となるトリチウムが万一建家内に漏れた場合の効率的除去技術の研究をすすめてきた。近年、茨城大学との共同研究の下、高温貴金属触媒酸化を用いた従来技術に替わる新しい方法として、環境中の水素ガスを常温で酸化する微生物を利用してトリチウムを酸化し効率的に除去する技術を開発した。
佐藤 浩司
火力原子力発電, 58(10), p.1011 - 1028, 2007/10
我が国における高速増殖炉技術の研究開発の経緯と現状,今後の計画について、関連サイクル及び国際動向・国際協力を含めて紹介する。
小川 益郎; 日野 竜太郎; 國富 一彦; 佐藤 博之
火力原子力発電, 58(10), p.1029 - 1037, 2007/10
高温ガス炉は原子力エネルギーの利用分野拡大のための最適な炉である。本報では、高温ガス炉の特長である、多様な産業への熱利用,高い熱効率,高燃焼度及び高い固有の安全性を述べるとともに、日本及び世界各国における高温ガス炉開発の現状を報告する。
二宮 博正
火力原子力発電, 58(10), p.1038 - 1046, 2007/10
核融合研究開発の現状と今後の展開について解説する。はじめに炉心プラズマ研究の基礎から最近の成果について述べ、次に日,欧,米,ロシア,中,韓,インドの7極で建設が進められているITER計画について、その概要及び装置と主要技術の現状について述べる。最後に、日欧で進めることが決定した幅広いアプローチ活動の3つのプロジェクトの概要を紹介している。
山岸 秀志; 角田 恒巳*
共同研究成果概要,将来型原子力発電技術の高度化に関する研究, p.197 - 211, 2006/06
本論文は、原子力機構,東北電力,東京電力及び日本原子力発電との間で、平成10年度から同13年度までの4年間行われた共同研究「高度計装システムの技術的成立性研究」の成果をまとめたものである。本共同研究では(1)光センシング計装システムの開発及び(2)炉外核計装システムの開発が行われた。光センシング計装システムの開発では、光ファイバセンサを炉心内に挿入し、出力,温度等の炉内諸情報を同時分布計測する炉内マルチ計測システムを試作開発した。同システムの試験を原子力機構の照射試験炉JMTRで行い、中性子束レベル10n/ms,線レベル10Gy/s及び温度650Cの厳しい炉内環境において光ファイバによる連続測定を実証した。炉外核計装システムの開発では、原子炉の圧力容器側壁あるいは圧力容器内のような高中性子束かつ高線々量率の環境下においても作動可能で、6桁以上の広い計測範囲をカバーし、高い位置検出分解能を有する位置検出型核分裂計数管(PSFC)及びPSFCを用いた核計装システムの開発を行った。このシステムの将来の応用としては、商用発電炉PWRの炉心軸方向の出力分布を1本のPSFCにより、連続した分布で、かつリアルタイムで計測する核計装システム,BWR炉内の高精度出力分布及びボイド挙動の計測、あるいは、溶液ウラン臨界実験装置における核反応量の高精度計測システム及びボイドの挙動を計測するシステム等を実現することである。
塩沢 周策; 小川 益郎; 日野 竜太郎; 小貫 薫; 坂場 成昭
火力原子力発電, 57(1), p.7 - 12, 2006/01
日本原子力研究開発機構が開発を進めている高温ガス炉を利用する水素製造に関し、環境・エネルギー問題と高温ガス炉水素製造の必要性,水素製造の現状と将来技術,高温ガス炉の構造と特徴,高温工学試験研究炉計画,水素製造に関する研究開発,高温ガス炉の導入及び長期的展望について解説する。
二宮 博正; 小西 哲之
火力原子力発電, 52(10), p.149 - 155, 2001/10
発電技術の将来展望・先進発電方式の一つとして、核融合の現状と今後の展開についてまとめた。初めにトカマク炉心プラズマ研究と炉工学技術の現状と最近の成果を示し、次に、国際熱核融合実験炉(ITER)計画について述べる。また、ブランケットの原理・構造を中心に核融合発電炉の概念について紹介するとともに、動力炉に向けた課題を示す。
武藤 康; 國富 一彦
火力原子力発電, 52(10), p.1279 - 1286, 2001/10
発電技術の将来展望として、高温ガス炉ガスタービン発電システムに関する研究開発の動向,技術的成立性と開発課題,安全性と運転特性,核燃料の有効利用と放射性廃棄物低減,経済性及び将来展望につき解説した。技術的成立性に関しては、ブロック型高温ガス炉が大容量化し易い点でペブル型よりも優れていること、ガスタービンシステムの選択肢(インテグラル型と分離型,立置きと横置き,単軸と多軸)にかかわる技術課題と選定結果につき記した。核燃料の有効利用と放射性廃棄物低減に関しては、軽水炉に比べて高燃焼度を達成できることと高い熱効率のために、非常に有利な特性が得られることを解説した。経済性については高温発電における算定結果に基づき、経済性においても軽水炉よりも優れていることを述べた。最後に将来展望として熱効率向上の可能性と国際協力の重要性につき記した。
田中 利幸; 武藤 康
火力原子力発電, 51(10), p.318 - 323, 2000/10
最近50年間における高温ガス炉の発電利用分野における開発の経過を記す。高温ガス炉ガスタービンの開発が1960年代に始まり、一たん凍結された後、近年再開されるに至った経緯、各国の現状、高温ガス炉の特徴、OGL-1ループ,HENDEL,HTTRの経緯、高温ガス炉ガスタービンの特徴、プラント設計例、研究開発の現状について記す。さらに、将来展望として、開発試験のあり方、経済性の見通し、高性能化の可能性について記した。